本文へスキップ

message

2024年9月8日聖日礼拝説教要

イエスの山上の垂訓(四)

        柔和な人たちはさいわいである。


「柔和な人たちはさいわいである。彼らは地を受け継ぐであろう」
(マタイ福音書5章5節)


 リビングバイブルでは「柔和で高ぶらない人は幸福です。全世界はそういう人のものになるからです」とあります。そしてこの柔和とは「優しい」「おとなしい」という意味でクリスチャンの徳目の一つです。

 そしてこのみ言葉は聖書のなかによくでています。例えば、コロサイ書3章2節には、「あなたがたは神に選ばれた者、聖なる愛されているものだから、あわれみの心、慈愛、柔和、寛容を身につけなさい」とあります。また詩篇27篇11節には「柔和なる者は国を継ぎ、豊かな繁栄を楽しむことができる」とあります。

 しかし、この柔和はガラテヤ書5章22節では「御霊の実」とあります。自分でも出来ないことも聖霊の力に満たされるときに柔和なる力を与えられるのです。

 イエスも柔和な人として登場しています。マタイ福音書11章29節に「わたしは柔和で心のへりくだった者であるから、わたしのくびきを負うてわたしに従いなさい」とあります。また21章5節にも「シオンの娘に告げよ。見よ、あなたの王がおいでになる。柔和なおかたで、ろばに乗って、くびきを負うろばに乗って…」と、メシヤ来臨の預言が語られています。そしてイエスはその預言の通りにろばの背に乗ってエルサレムに入場されました。

 わたしたちも御霊に満たされて柔和な人になるなら、「かれらは地を受け継ぐ」とあるように、この世の人から愛され、信頼されて受け入れられるのです。

 士師記8章には、ギデオンの柔和な態度が紛争を防いだとあります。士師ギデオンがミデアン軍と戦うとき、彼には3万2千の軍勢がありましたが、神はそれでは多すぎる、戦いたくない者を帰せと言われ、そのとおりにしたところ2万人が戦列を離れて、1万2千人しか残りませんでした。ところが神はそれでも多すぎると言われ、300人しか残りませんでした。これがギデオンの300の精兵となりました。

 この300でミデアン軍のキャンプを包囲して、真夜中に一斉に壺を割りましたら、その音に驚いたミデアンがテントから外をのぞくと、300本の松明がぐるっと取り囲んでいたのに驚いたミデアン軍は暗がりで同士討ちをして敗北したのです。このギデオン軍の優勢な戦いをみて、先に戦列を離れたエフライムの人たちも戦列に加わり戦いました。

 戦いの後、エフライムの人たちがギデオンに向かって、「どうして一緒に戦うように声をかけてくれなかったのか」と、激しく彼を責めました。そのときギデオンは彼らに言いました。「今、あなたのしたことは、われわれのしたことと比べものになりましょうか」と下手に出たところが、彼らの憤りは解けた」とあります。つまりギデオンの柔和な態度がエフライムの人たちの怒りをおさめたのです。

 箴言15章1節に「柔らかい答えは憤りをとどめ、激しい言葉は怒りを引き起す」とあります。わたしたちも人々から無理難題を言われても、それに対抗せず、柔和な心で、また優しい言葉で接するとき、人々と平和に過すことができるのです。そして御霊はわたしたちにそのような心を与えてくださるのです。

 もう天国に行かれましたが、わたしたちの教会にとても柔和な人がおられました。その人から険しい顔をしたのを見たことはありませんでした。そして恵まれて天国に行かれました。

ところが若いころは短気で気に入らんことがあるとすぐに喧嘩をする青年でした。就職しても気に入らないと直ぐにやめてしまい、20歳までに10数回も仕事が変わったそうです。また建造中の軍艦の上でとっ組み合いの喧嘩をしたこともあるそうです。

 ところが、ある人に連れられて教会にきて救われ、柔和な人に変えられたのです。熱心なクリスチャンとなり、朝晩、教会に来て祈っておられました。ところが戦争が激しくなり、「月月火水木金金」と生産体制になり、日曜日も休めなくなりましたので、その人は日曜日の礼拝を守れないので、その仕事をやめると言ったのです。困った班長は悪いようにしないから、とにかく日曜日に出てくるようにと言ったのです。そして出ていくと班長は「公用」と書いた腕章を出してきて、「これをつけて昼まで外へ出てこい」と、いきなはからいをしてくれたので、戦時下も堂々と礼拝を守ることができたのです。

 この人にも召集令状がきて鳥取連隊に召集されましたが、初年兵の訓練が終わったとき彼が勤めていた川崎造船から、「この人を返して欲しい。この人がいないと軍艦に大砲を据えつけられないから」と申し出があり、特例で帰されました。

 定年まで勤めあげ、「工師」という肩書をもらって退職しました。これは名誉ある称号だそうです。「柔和な人たちはさいわいである。彼らは地を受け継ぐであろう」。

                                                   坊向輝國