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2015年12月6日



夢を解き明かしたダニエル

 

『それからダニエルは家に帰り、同僚のハナニヤ、ミシャエルおよびアザリヤにこの事を告げ知らせ、共にこの秘密について天の神のあわれみを請い、ダニエルとその同僚とが、他のバビロンの知者と共に滅ぼされることのないように求めた。ついに夜の幻のうちにこの秘密がダニエルに示されたので、ダニエルは天の神をほめたたえた』。

             (ダニエル記2章17節)

 

 

 今日はダニエルの祈りについて話します。彼は王の見た不思議な夢を、祈って解き明かしたのです。話に入る前にこの事件の時代背景をお話ししますが、南ユダ王国がバビロン帝国に滅ぼされ、エルサレムにいた主だった住民(男女合わせて)一万数千人がバビロンの地に連行されたのです。これを「バビロン捕囚」と言います。

 

 バビロンのネブカデネザル王はユダヤ人の優秀さを知っていたので、この中から特に優秀な青年を選んでエリート教育を施しました。それはこれらの青年を将来バビロンに仕える役人にしようと考えたからです。そして選ばれたのが、ダニエルとハナニヤ、ミシャエル、アザリヤでした。

 

 ところが、ネブカデネザル王はある日、とても気になる夢を見たのです。あまりにも奇妙な夢だったので王は気になり、その夢の解き明かしをバビロンの知者、学者に求めましたが、だれもそれを解き明かすことはできませんでした。何故なら、王は自分が見た夢を教えなかったからです。これでは解き明かしようがありません。まさしく無理難題の問題でした。ところが「王は怒り、かつ憤り、バビロンの知者をすべて滅ぼせと命じた」のです。それを知ったダニエルは王のところにはいっていって、しばらくの猶予を求めました。

 

 そして家に帰り、同僚の三青年と共に、天の神の憐れみを請い神に祈りました。すると彼らの祈りに神は答えられて、その秘密がダニエルに示され、無理難題の問題も無事解決することができたのです。それは「そんなことは無理だ」と言って諦めたり、投げ出さないで祈ったからです。

 

 エレミヤ書33章3節に『わたしに呼び求めよ、そうすれば、わたしはあなたに答える。そしてあなたの知らない大きな隠されている事を、あなたに示す』とあります。わたしたちも、そんな無理難題はどうしようもない、と諦めたり、投げ出したりしないで祈り求めることです。そうすれば天の窓を開いて助けてくださるのです。

 

 その王の見た夢は、王の前に大きな像が恐ろしいほどに光り輝いていました。その頭は純金、胸と両腕は銀、腹とももとは青銅、すねは鉄、足の一部は鉄、一部は粘土です。

ところが、一つの石が人手によらずして切り出されて転げ落ちて像にぶちあたったとき、その像が微塵に砕けてしまっただけでなく、「その像を撃った石は、大きな山となって全地に満ちました」というのです。

 

 つまり、純金の頭はバビロン帝国のことで、この国もエルサレム陥落から五十年後にペルシャ帝国によって滅ぼされてしまいます。そして「胸と両腕は銀」とありますが、これは新しく世界制覇したペルシャ帝国のことで、それから二百年続きます。「第三に青銅の国が起     って、全世界を治めるようになります」とありますが、これがギリシャのことです。マケドニヤ出身のアレキサンダーがペルシャ帝国を滅ぼして全世界を支配しますが、王は32歳のときに熱病のために他界してしまったので、第四の国が起こって「鉄のように強い」とありますが、これがローマ帝国です。そして世界の覇権を握りました。

 

 ところが、「一部は陶器師の粘土、一部は鉄であった」とありますが、これはローマ帝国の分裂を意味します。そして事実、西暦395年のテオドシウス皇帝の死後に国は二つに分裂し「東ローマ帝国」と「西ローマ帝国」になりました。つまりネブカデネザル王の見た夢の通りに世界の歴史は進展したのです。これは高校で世界史を学ばれた人ならだれでも承知のことです。ところが、この歴史が展開される600年も前に、しかも異教の王のネブカデネザル王に、これから世界で起ることを夢で知らせたのかは不明です。あるいは、神がダニエルに示された預言だったのかもしれません。

 

 そして、ローマ帝国が世界の覇権を得ていた時代にイエス・キリストはこの世に誕生され、神の国の福音を宣べ伝えました。そして十字架にかけられ、三日目に墓から復活されたのです。またこの帝国が支配した時代に、キリスト教が伝道され、392年テオドシウス皇帝の時代にキリスト教がローマ帝国の国教となりました。つまりネブカデネザル王が夢を見、ダニエルが解き明かしたとおりになったのです。

 

                 2015.12.6