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2015年6月21日

 

 

 最初の殉教者ステパノ

 

『こうして、彼らがステパノに石を投げつけている間、ステパノは祈りつづけて言った、「主イエスよ、わたしの霊をお受け下さい」。そして、ひざまづいて、大声で叫んだ、「主よ、どうぞ、この罪を彼らに負わせないで下さい」こう言って、彼は眠りについた』。

                    (使徒行伝7章59節)

 

 これはステパノが石を投げつけられて殺され殉教したところですが、彼は初代教会の最初の殉教者となりました。このステパノはイエスの十二弟子ではなく、6章で選ばれた7名の執事の一人でした。

彼のことを「ステパノは恵みと力と に満ちて、民衆の中で、めざましい奇跡としるしとを行っていた」(8節)とあります。また「ステパノと議論したが、彼は知恵と御霊とで語っていたので、それに対抗できなかった」(9節)とあります。また「議会の席についていた人たちは皆、ステパノに目を注いだが、彼の顔はちょうど天使のように見えた」(15節)とあります。

 

 こんな恵まれた人を何故殺そうとしたのでしょうか。それは「妬み」のためでした。

サタンは妬みの霊です。自分が不幸なので、恵まれて幸せそうにしていると腹が立って面白くないのです。あのイエスを十字架に掛けて殺したのもユダヤ人の妬みのためでした。マタイ福音書27章18節『彼らがイエスを引き渡したには、妬みのためであることが、ピラトにはよくわかっていた』とあります。  ,

 

 また箴言14章30節には『妬みは骨の腐りなり』(文語訳)とあります。妬み心は人間の冷静さを失わせ、犯罪にまで至らせる恐ろしい心です。ですから、恵まれたクリスチャンは御霊によって聖別(潔め)されなければなりません。

 

 ある奥様が、こんな話をしておられました。二十歳過ぎの可愛い娘さんを亡くして、毎日悲しみの日々を送っておられましたが、ある日、近所の銭湯に行かれましたら、娘と同じ年頃の娘さんが湯船に首まで浸かって幸せそうにしているのを見たとき、うちの娘は死んでしまったのに、この娘は…と思うと、むらむらと妬み心が湧いてきました。

 

 そこでそのお母さんは湯船の中に入り、娘さんに近づき、太股を思い切りつねったそうです。そしたら、その娘さん、きゃっと声をあげて湯船から飛びだして行きました。これは娘さんの幸せな顔をみて妬み心が起こったからでした。そして、そのお母さん「先生、わたしはほとうに罪人でした」と懺悔をされていました。

 

 さて、ステパノが群衆から石で打ち殺されそうになっていたとき、静かに祈ることができたのは、彼が天国をみていたからです。55節『彼は聖霊に満たされて、天を見つめていると、神の栄光が現れ、イエスが神の右に立っておられるのが見えた。そこで、彼は、「ああ、天が開けて、人の子が神の右に立っておいでになるのが見える」と言った』。

 

 ステパノは神がいます天を見たのです。ですから殺されそうになっても恐れがなかったのです。天国の幻を見た人は死を恐れません。あるとき、教会員のお爺さんがこんな話をしてくれました。その夢は「自分が長い箱の中に寝かされて暗いトンネルの中を運ばれました。そして、ようやくトンネルから出たらそこは眩い世界で、綺麗な花々の咲く庭に燕尾服を着た紳士と美しいドレスを着た淑女たちが、美しい音楽に合わせてダンスをしているのです。しばらく見惚れていると目が覚めました」という話でした。彼は天国の夢を見たに違いありません。それから暫くしてその人は天国に召されました。

 

 もう一度いいますが、「天国を見た人は死をおそれません」。この前にも話しましたが、1596年に豊臣秀吉は初めて「キリシタン宣教師追放令」を出して、京都のフランシスコ会の宣教師と信徒25名を捕縛して、長崎に護送して処刑しました。捕らえられた人たちは耳鼻を切り落とされ、三名ずつ牛車に乗せられて京都、大阪、堺の町を引回して見せしめにしましたが、彼らの毅然として態度には、むしろ同じキリシタンの人々を励ます結果になりました。

 

 その獄中にあってペテロ・バウチスタはこんな書簡を書いています。「わたしたちは喜びに満たされています。それはデウス(神)の信仰と愛のために、縄目の辱めを受けるに、ふさわしい者とされたからです」。また、三木パウロは十字架の上で、「死に臨んで、わたしが偽りを申さぬことを信じてください。キリシタンの教えによるほか、救いの道のござらぬことを申し上げまする。この死罪について太閤さまをはじめ、お役人衆になんの恨みも抱いておりません。切に願いまするのは、太閤さまをはじめ、日本のみなの衆がキリシタンにおなりになさって、救いを受けなさることでございまする」。このあと彼らは槍で突かれて絶命しましたが、見事な殉教でした。

201506.21