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2023年1月22日聖日礼拝説教要旨

聖書箇所   使徒行伝16章6節~12節  

「困窮の中での新しい導き―ヨーロッパ伝道」   


パウロがこの幻を見た時、・・・神がわたしたちをお招きになったのだと確信して、わたしたちは、ただちにマケドニヤに渡って行くことにした。
(使徒16章10節)


人の心には多くの計画がある。しかし主のはかりごとだけが成る
(箴言19章21節[新改訳]) 


「わたしのしていることは今あなたにはわからないが、あとでわかるようになる」
(ヨハネ福音書13章7節)

民よ、いかなる時にも神に信頼せよ。そのみ前にあなたがたの心を注ぎ出せ。神はわれらの避け所である。」                
(詩篇62篇8節)

 

 私達信仰者は、「神の御霊(聖霊)」に導かれている「神の子ども」ですから(ローマ8章14節)、「聖霊に導かれ」また「聖霊によって止められる」と前回お伝えしました。それは主なる神様の御心が成就するためでした。

 使徒パウロが、「第2回伝道旅行」の大きな目標であった「エペソ伝道」は、聖霊が禁じられましたが、約4年後に本格的に取り組むことが出来て、実に「足かけ3年間(使徒20章31節)」の長きに及び、多くの伝道の実が結ばれました。また「イエスの御霊が・・・許さなかった」ビテニヤ州の伝道も、後の時代に大いに伸展しましてビテニヤ州全体がキリスト教化され、多くの人々が入信したのです。それは、「パウロ」ではなく他の人が担当するように神様が定めておられたのでした。

 「箴言」に「人の心には多くの計画がある。しかし主のはかりごとだけが成る」(同書19章21節[新改訳])とあり、「ヨハネ福音書」には「わたしのしていることは今あなたにはわからないが、あとでわかるようになる」(同書13章7節)とあります。私達は「神様が、聖霊によって導かれる色々の事柄」の全ての意味を理解出来ません。しかし、私達を愛してくださる神様の御心やお考えや御計画は、主イエス様が言われるように「後で、分かるようになる」のです。

 使徒パウロたちは「西のエペソへの道」禁じられ、更に「北のビテニヤへの道」も許されず、行く手を閉ざされたので、仕方なく「道の開かれている」西の方向にある「港町トロアス」に下ったのでした。その「トロアス」の町は、ヨーロッパとアジヤを分けます「エーゲ海」に面した港町でした(使徒16章8節)

 パウロにとっては、「もう行き止まりだよ」、「エーゲ海があって先に進めないよ」「何故、こんなところに来てしまったのか。どうなってるの?」と困惑したに違いないと思います。更に、「トロアス」では「パウロ自身が病気になったのではないか」と何人もの聖書学者が考えています。その理由は、パウロが「使徒行伝」を書いた「著者のルカ」に「トロアスの港町」で初めてパウロと出会ったからです。

 パウロの「第2回伝道旅行」の記事で「使徒16章9節」までは、パウロ達一行を「彼らは…」と第3者の事として記しています(「16章6節」では「それから彼らは、アジヤで…」とありますが、「彼ら」一行には「著者のルカ」は含まれていません)。ところが、その後の「トロアスの町」では、「パウロがこの幻を見た時…、わたしたちはただちにマケドニヤに渡って行くことにした」(使徒16章10節後半)とありますように、「パウロ達一行」を指す言葉が「わたしたち」に変わって来たのです。それで、「著者のルカ」が「パウロ達一行」に加わったとが明らかにされています。

 しかも、この「使徒行伝」の「著者のルカ」は、「医者」でもありました。パウロ自身が「愛する医者ルカとデマスとが、あなたがたによろしく(コロサイ書4章14節)と記しています。有名な聖書学者のウィリアム・バークレーは、このトロアスの港町で病気に倒れたパウロが、その町にいた「医者のルカ」を招いて手当をしてもらったのでは、と考えました。そして、「ルカはパウロの導きを受けて、キリスト教に入信して救われて、パウロ達一行と同行することになった」と推測されているのです。

 この聖書学者の推測が正しなら、使徒パウロは伝道したい地方に向かう道を、西にも北にも閉ざされて、更に病気まで患って「トロアスの港町」で倒れてしまったのでした。信仰者としても人間としても、困窮の極み、最も困難な時を過ごしたのですが、この大変な時にパウロの生涯でも画期的なこと、キリスト教会にとっても時代を画する画期的な出来事が起こったのです。人の一生でも、この世の働きでも、とことん困った出来事、万事休すの出来事の後に、最も大切な「一縷の光明、一筋の光明」が射し、将来が開け、希望の光が降り注ぐものです(iPS細胞でノーベル賞受賞の山中伸弥教授の研究者人生参照)。

 「詩篇62篇」には、「民よ、いかなる時にも神に信頼せよ。そのみ前にあなたがたの心を注ぎ出せ。     神はわれらの避け所である。」(同篇8節)とあります。使徒パウロは、この時、道を閉ざされ八方塞がりで病気に倒れるという、信仰者としても人間としても最も困難な時を過ごしていましたが、その時、呻く彼に、「一筋の光明」将来が開けて希望の光が射したのです。それはパウロ達一行の将来の姿を示します「幻(ヴィジョン)」であり、神様のこれからの御計画が示されたのでした。

 アジヤの西の端であります「トロアス」の港町。その対岸は、ヨーロッパの玄関「マケドニヤ州」が広々と広がっていました。その地に住む「マケドニヤ人が助けを求めて叫んでいる幻」(使徒16章9節)を見たパウロ達一行は、トロアスの港町で加わった「医者のルカ」も含めて、この新天地ヨーロッパに向けて出発したのでした(使徒16章10節)

 聖霊なる神様に止められ、病に倒れたのは「全く新しい、考えもしなかった将来の希望」に歩み始めるためだったのです。更に、この時パウロ達に加わった「医者のルカ」は後に「ルカ福音書」や「使徒行伝」を書いて、私達「人類」に最大の貢献をした人物です。使徒パウロが「トロアスの港町」で行き止まって、ルカと出会った事はキリスト教にとって本当に大切な出来事でした。  

 また、「キリスト教」と言えば「ヨーロッパやアメリアの宗教」ではなく、実は「アジヤで生まれヨーロッパに広まった宗教」と知らされます。パウロ達一行の「ヨーロッパ伝道」によりまして、キリスト教は更に「世界の宗教」への歩みを進めることが出来たのでした。

 もう一つ、「アジヤ」のパレスチナの「エルサレム」から広まったキリスト教の福音が、「ヨーロッパ」に届き、そこでキリスト教信仰が広められてキリスト教会が建て上げられることにより、「キリスト教信仰の内容」が曖昧なもので終わるのではなく、きちんとした文書で表現され「明確な言葉による信条」となりました。2千年間のキリスト教会の歴史には、誤った教えも多く出て来ましたが、そんな中でも基本的な教えが固く守られてキリスト教会が支えられて来たのは、ヨーロッパに伝道されて「使徒信条」のような「明確な言葉による信条」が生まれたからです。

 現代の私達も「いかなる時にも神に信頼」し、「そのみ前に…心を注ぎ出(詩篇)して祈りましょう。必ず、「新しい道」「希望の道」が開かれます。

      
                        2023年1月23日(日)聖日礼拝説教要旨 竹内紹一郎